矯正治療の種類
唇側矯正
一般的な矯正治療では、歯の表面にブラケットという金属の装置を取り付け、同じく金属のワイヤーで歯を動かしながら矯正を行います(左側)。ほとんどの症例に対応可能です。
クリアブラケットなどと組み合わせると、比較的目立たないようにすることができます。

リンガルブラケット(舌側(裏側)矯正装置)

舌側矯正は非常に難しい治療であり矯正医の技術力や経験も必要としますが、誰にも見えないで精密に歯を動かすシステムです。ブラケットもワイヤーも歯の舌側に装着するため、外からはほとんど見えません。
デメリットとしては、舌が装置に触って気になったり、発音がしにくいなどがあげられますが、慣れていく場合がほとんどです。
- 装置が見えないので人に気づかれにくい
- 歯の舌側は表より丈夫なので接着剤のダメージが少ない
- 装置の構造上、出っ歯を効率的に治療しやすい
- 装置が舌側なので慣れるまで発音がしにくい
- 普及している表側装置より費用が高い
- 舌側矯正ができる歯科医院がまだ少ない
マウスピース型矯正装置について
最近では技術の進歩でこれまでより幅広い症例をマウスピース型矯正装置で対応出来るようになってきました。
一般的な矯正のようにブラケットとワイヤーを用いるのではなく、マウスピース型の矯正装置を装着することで歯を動かしていく矯正方法です。マウスピースをあらかじめ複数枚作製し、理想の歯並びに向けて段階を追って少しずつ形の異なるマウスピースに交換することで歯列を整えていきます。装着は、患者さんご自身にしていただきます。
ただし、適応症に限りがあり日本人に多い不正咬合には向かない場合があります。
また当然のことながら装置をつけていないと治療が進みません。通常、1日20時間以上の使用が必要です。

- 矯正中であることを人に知られたくない
- 食事中や必要なときには矯正装置を外したい
- 口の中の違和感が苦手
- 金属アレルギーが心配
- 激しいスポーツや吹奏楽などが趣味
一般的な矯正治療との違い
使用するマウスピースは透明なため、ブラケット矯正のように会話中や笑ったときにほとんど目立ちません。また、自分で取り外しができるので、口腔衛生の管理もしやすいです。

期間について
最初にカウンセリングと検査を行い、治療をスタートするのは一般的な矯正と同じです。その後は歯科医の指示通りにマウスピースを装着し、月に一度咬み合わせの状態や使用状況を確認します。歯の状態や矯正する部分によって治療期間は異なります。
子供の矯正
大人の矯正治療との違いは、成長があるということです。悪い歯並びを放置したままにすると、さらにひどい状態に移行したり、顎が変形したりすることがあります。
歯の萌出
この時期の矯正治療は
- 顎の位置が前後・左右・上下のズレなどの改善
- 永久歯が生えるスペースの確保
- 早期接触(歯の位置がずれてスムースに咬めない)の改善
を主に行います。
お子様の矯正は成長・発育という未来を予測しながら治療をすることになります。この時期に開始することで、将来の治療方法の選択肢がひろがるなどのメリットがあります。
ひとえに成長と言っても、上顎骨・下顎骨ではそれぞれ成長の時期が異なります。また女子と男子の性差もあります。その特徴を踏まえた上で、装置の選択や治療方針を決定いたします。
永久歯を並べるのは次のステップです。第二大臼歯(7番目の歯)が生えてからマルチブラケット治療を開始するのが望ましいです。
大人の矯正
矯正治療でいう大人の矯正とは、永久歯列のことを指します。
具体的には第二大臼歯が萌出してから、だいたい中学生以降のことです。
代表的な装置はマルチブラケットであり、近年では裏からの装置(リンガル)やマウスピース型などもあります。
不正な噛み合わせはもちろんのこと、審美的なことも考慮して治療を行いますので、よく噛めて健康的な歯並びになり、より魅力的な笑顔を手に入れることができます。
矯正治療は若いときにしかできないと思われている方もいらっしゃいますが、とくに年齢制限はありません。歯周的な問題がある場合は、制限がかかることがありますが、担当の先生と連携しながら治療することもできます。
成人の矯正治療について
歯並びが気になっているのに、子供の時からするものだと諦めてしまっていたり、費用や装置の見た目を気にして「最初の一歩」を踏み出すことができない方もいらっしゃいます。
しかし、だとすると、それはとてももったいないことです。
実際に当院でも、「ずっとコンプレックスだった歯並びを治したい」「仕事で好印象を与えたい」「結婚や転職を機に歯並びを治したい」など、20代の方から70代の方まで、矯正治療のご要望が多く寄せられています。
成人矯正はご本人の強い意志で始められるため、小児矯正に比べて高い治療効果が見込めることが多くあります。
矯正は歯や顎の骨、歯ぐきへの影響だけでなく、さまざまな面でメリットが多い治療です。矯正治療の必要性やメリットを理解し、将来のお口の健康のためにも成人矯正を検討していただきたいと思います。
患者さまがお持ちのイメージを大切にしながら、実際の骨格やお口の状態を見極め、カウンセリングを重ねることによって、実際の仕上がりのイメージをすり合わせていきます。
大人の矯正治療では、子供の時とは異なる事情で治療が難しいケースもあります。
しかし当院では、それらのケースにも柔軟に対応しながら治療を行えるようなプランをご提案しています。
矯正治療で歯並びを治すメリット
矯正治療は子どもだけでなく、大人になってから始める方にとっても大きなメリットがあります。
審美性の向上
機能性の向上
お口や体の健康
コンプレックスの解消
結婚式や引っ越しなどで中断する場合は?
どうしても転勤などで通院が難しくなる場合は、転居先での矯正歯科をご紹介するなどのサポートをいたします。
また、結婚式や出張などで、治療を一時中断したいという場合もお気軽にご相談ください。
※治療期間は約2年間が目安です。期間を短縮するのは難しいので、最初のカウンセリングの際に無理のない治療計画を立てております。
治療後の保定について
ワイヤーでの矯正治療終了後に歯並びを安定させることを「保定」と言います。
どんなに完璧な治療方法で矯正治療を行ったとしても、年数を重ねるうちに後戻りしたり、咬み合わせに変化が生じたりしてきます。親知らず(第三大臼歯)がある場合、後戻りの原因になる場合があれば抜歯を進めています。
当院では、このような後戻りについても十分に予測しながら治療計画を立て、後戻りを“遅らせる”ための保定を行っています。
後戻りが起こる原因
- 加齢による歯と口腔内の変化
- 長年の歯の使用による摩耗
- 虫歯治療
- 舌や口周りの筋肉のクセ
- 親知らず
抜歯について
歯を抜いて治療しますか?
まず、抜かずに治療が行えるかを考察します。
必要であれば抜歯をおすすめすることがあります。
小児の場合
健康な歯を抜くというのは、出来るだけ避けたいものです。適切な時期から
- ガタガタを改善する
- 永久歯が生えてくるスペースを確保する
- 顎の骨の成長をコントロールする
ことにより、抜歯の確率はかなり下がると考えます。
ただし、歯を抜かない事に固執し、それを治療目標にしてしまうと、逆にかみ合わせの不安定になったり、顔貌が悪くなったり、顎関節に悪影響が出ることもありますので、適切な矯正治療を選択しなくてはなりません。きちんと検査して、分析データなどから問題点を明確にし、それにどう対処するのかを考え、ひとりひとり適切な治療目標・方針を決めることが最も重要と考えます。
例えば、診断もせず、どんなケースでも床装置で顎を拡げるような行為は、最先端でも何でもなく、慎まなければなりません。
大人の場合
分析による前歯の傾き、ガタガタの度合い、顎や歯の大きさなどを考慮しながら、抜歯・非抜歯を決定します。無理に非抜歯で治療すると、口元が出たままならんだり、歯周組織や顎関節を痛めるたりします。また、無理な治療は安定が悪いことが多いです。